5G基地局稼働後に様々な症状 避難後に改善・消失 スウェーデンの論文

(電磁波研会報第137号より)

5G基地局を設置されたアパートに住む夫婦に「マイクロ波症候群」または電磁波過敏症で見られる典型的な数多くの症状が出たというケーススタディ論文[1]が、学術誌『Medicinsk Access』(2022年2月発行)に掲載されました。夫婦が電磁波が低い別のアパートへ転居後すると、症状が改善または消失しました。論文の著者は携帯電話使用と脳腫瘍の関係の疫学調査をリードしてきたスウェーデンのLennart Hardell(レナート・ハーデル)らです。
あるアパートの7階に62歳女性、63歳男性の夫婦が10年前から暮らしていました。アパートの上には3G、4Gの基地局がありました。2人は持病はありましたが、概ね健康でした。アパートの場所の記載はありませんが、論文でスウェーデンの規制値について論じていることから、スウェーデン国内と思われます。

寝室の電波の強さが約40倍に
大家から、5Gの基地局も建つと聞き、2人は測定器「Safe and Sound Pro II」で2021年11月、5G稼働前の電波を測定しました。5G稼働後は、同年12月、2022年2月に測定されました。
基地局からわずか5m下のベッドルームは11月の0.9μW/cm2から12月は35.4μW/cm2と約40倍の強さに、リビングは0.2μW/cm2から5.1μW/cm2と約25倍の強さになりました(いずれも最大値)。
2022年2月の測定では、ベッドルームで最大値169μW/cm2という、極めて強い数値となりました。
論文は「マイクロ波は乱高下する傾向があるが、スウェーデン放射線安全庁の基準値は(6分間測定した)平均値であるため、最大値が1000μW/cm2よりかなり高くても許されることになり、実際にはより生物学的に活性が大きな変動に対して保護されないことになる」と指摘しています。最大値169μW/cm2を計測したときも、平均値はわずか0.5~2.0μW/cm2でした。
2021年11月中に5G基地局に試運転が始まると、2人にさまざまな症状が出ました。数日後に症状が重くなり、電磁波が低い別のアパートに引っ越しました。

耳鳴り、睡眠障害、疲労感など
表は、2人の症状をまとめたものです。

夫婦の自己申告による症状の強さ。0は症状なし。症状がある場合は軽症1から重症10まで10段階で評価。論文掲載表の英訳(Study Proves “Safe” 5G Radiation Causes Major Health Problems Within Days)より

男性は、5G設置前から、右股関節と指の変形性関節症、顔と頭皮に脂漏性湿疹の既往がありました。5G設置後、耳鳴り、疲労感、皮膚症状、睡眠障害、情緒障害、鼻血、皮膚症状などが出ました。これらはマイクロ波症候群の典型的な症状だと論文は指摘しています。避難後わずか1日で、すべての症状が軽減または消失しました。
女性は、5G設置前から高血圧、疲労症候群、軽い耳鳴りとめまいなどがありました。5G設置後、睡眠障害とめまいが特にひどく、次いで集中力低下、疲労感、イライラ、灼熱感・手や腕の皮膚のチリチリ感などが強く出ました。これらの症状は避難後1~3日で軽減または消失しました。
論文は、2人の症状について「マイクロ波症候群に典型的な症状」であると指摘。「マイクロ波症候群は国際的に認知された概念で、『電磁波過敏症(EHS)』とも呼ばれている」と述べています。論文は「マイクロ波症候群については、医療関係者、一般市民とも知らない者が多く、そのため隠れた症例が多いと推測されるので、医療関係者への啓蒙と、統一した(国際疾病分類の)ICDコード付与が必要であろう」と述べています。
なお、スウェーデン語の論文はDeepLで翻訳して読み、英文による報道も併せて参照しました。【網代太郎】